ヴィクトリア州随一のピノ・ノワールの名手!
オーストラリアというと温暖なイメージがありますが、ヴィクトリア州の南にあるモーニントン半島は、海からの冷たい風にさらされ国内屈指の冷涼産地として知られています。ワイン造りの歴史は古いですが、この産地の本当の素晴らしさが見直され、世界に誇るピノ・ノワールとシャルドネ(この2品種はフランス・ブルゴーニュの、それぞれ赤ワインと白ワインの主要品種です。どちらも涼しい山地に適用し、繊細で豊かな香りが特徴的です)の産地として注目を集めたのはつい最近のことです。
そんなモーニントン半島のワイナリーの中でも、1978年創業でパイオニアの一つと言えるのが、ここストニアーです。ストニアーがなんといっても面白いのは、ワインを造っている二人の醸造家がすごいこと。
マイク・シモンズはフランス、イタリアでもワイン造りを学び、非常に広い知見とノウハウを持っています。もう一人のウィル・バイロンも、ヤラ・ヴァレーやハンター・ヴァレーといったオーストラリアの他の銘醸地で経験を積み、さらに一年の半分を北半球に移動してフランス・ブルゴーニュでもワイン造りを行う、いわゆる「フライング・ワインメーカー」としてのキャリアも持っています。
世界を知り、そして畑を知るすごい二人。そんな彼らがつくるワインは、英国のデキャンター誌、世界最高のワインコンペティションの一つインターナショナル・ワイン・チャレンジでいずれも最高評価を受けるほど、素晴らしい品質を誇っています。
ブドウ本来の果実味を最大限に活かしたつくり
ひと昔前まで、ワインは「樽の香りが強いほうが良いワインだ」という考えが支配的だったように思います。しかし現代のワイン業界では、ブドウ栽培技術が向上したことでより適切な熟度のブドウを収穫することができるようになり、ブドウ本来の風味を活かしたワイン造りが主流となっています。そのため、本来繊細な香りのピノ・ノワールについては、あまり樽の香りが効きすぎていないほうが良い、という考えが一般的になってきました。ストニアーもまさにその考え方で、オーク樽で熟成をさせるものの、その香りがワインにつきすぎないよう、新しい樽の使用率を下げて、ピノ・ノワールの繊細でフルーティーな風味を殺さないようにつくっています。
そうしてできたこのワインは、レッドチェリーやラズベリーのじゅわっとした果実の風味が広がり、さらにスパイスやハーブのニュアンスも出てきます。ぎゅっと凝縮しているけれど、口当たりはとても滑らかで飲み心地が良く、とても綺麗な味わいなのが魅力的です。
若い、フレッシュなピノ・ノワールにはお肉料理全般よく合いますが、特に鶏肉料理との相性が良いです。タイムやチャービルといったハーブを使うとさらに相性が良くなりますが、シンプルに塩胡椒だけでも、バッチリ合います!少し冷やし目でも美味しく楽しめますので、冷蔵庫に入れておいて、食卓でゆっくり温度が上がるのを楽しむのも良いのではないでしょうか。
試飲・執筆 2020年7月 店長竹村